B2Bマーケティングの課題は「施策不足」ではなく「分断」|コビトロジック

作成者: 角田和樹|Jul 31, 2026, 2:20:54 PM

サイトはある。記事も書いた。広告も試した。HubSpotも入れた。それでも、成果が出ない。問い合わせは増えない。

こういう相談を受けるたびに思うことがあります。この会社は、何もしていないわけではない。むしろ、やっている。やっているのに前に進まないから、苦しい。

申し遅れました、コビトロジックの角田です。独立する前は事業会社の中でマーケティングをやっていて、いまは外側から、同じ悩みの相談を受け続けています。

今日はその「なぜ」の話をします。結論を先に言うと、止まっている理由は施策が足りないからではありません。施策と施策、部署と部署が、つながっていないからです。ここで言う分断とは、施策や部署がそれぞれ正しく動いているのに、その間で情報や判断基準が共有されていない状態のことです。

「何もしていない」会社は、実はほとんどない

相談に来る会社の資料を見せてもらうと、たいてい驚きます。サイトはリニューアル済み。ホワイトペーパーが4本。広告のレポートも毎月届いている。ツールも入っている。

足りないものを探す方が難しい。それでも成果が出ていないなら、疑うべきは「量」ではなく「間」です。施策と施策の間、マーケと営業の間、数字と判断の間。このあたりが切れていることが多いです。切れた鎖に輪を足しても、鎖は長くなるだけで、つながりはしません。

相手は「会社」ではなく「部署の集合体」

事業会社の中にいた頃、身体で覚えたことがひとつあります。

会社というものは、外から見るほどひとつではない、ということです。

A部署とB部署ではKPIが違う。担当者のマインドも違う。経営層と現場では、同じ事業を見ていても、見えている景色──優先順位や危機感──がまるで違う。「会社に向けて」施策を打っているつもりでも、実際に受け取るのは、別々の数字を追いかける別々の部署です。

B2Bマーケティングが難しい理由の大半は、ここにあると思っています。そしてこの分断は、社内の部署間だけでなく、発注先との間でも同じ形で起きます。その話は最後にします。

営業とマーケは、違う数字を見ている

マーケ担当は今月のリード数を見ています。営業は今月の商談と受注を見ています。マーケが「リードは十分出ています」と報告し、営業が「使える数はほんの一部だった」と返す。よくある光景です。

起きているのは、どちらかのサボりではありません。営業とマーケの連携不足というより、リードとは何か、を一緒に決めていないだけです。どちらも自分の数字には真面目に働いている。ただ、見ている数字が違う。

ツールを入れても、決めごとがなければ動かない

ある会社では、CRMの立派な運用ルールがありました。それでも、使い倒している部署と、ほとんど触っていない部署に、きれいに割れていました。

ツールが悪いのではありません。「誰が、何を見て、いつ動くか」という決めごとが、部署をまたいで共有されていなかった。HubSpotは決めごとを実行する道具であって、決めごとの代わりにはなりません。

分断は、こういう形で現場に現れる

B2Bマーケティングの課題の多くは、次の3つの風景に集約されます。心当たりはないでしょうか。

記事は増えるのに、商談につながらない

誰に読んでほしいのか。営業がその記事をどう使うのか。ここがつながっていない記事は、公開した瞬間に役目を終えます。「本数は増えているのに、営業が1本も商談で使っていない」なら、コンテンツの分断です。

フォームとレポートが増殖する

あるサイトでは、トップページから辿れない問い合わせフォームが4つありました。施策のたびに作られて、誰も全体を把握していない。届いたメールは毎回、人が読んで担当者に振り分けていました。フォームは増えた分だけ、「どこから来た、誰の問い合わせなのか」が分からなくなります。

数字はあるのに、次の一手が決まらない

レポートは毎月届いているのに、会議で次の一手が決まらない。流入は増えたのに問い合わせが増えないのか、問い合わせは来ているのに商談にならないのか。どこで詰まっているかで、打ち手はまったく変わります。詰まりの場所が見えない数字は、いくら眺めても判断につながりません。

新しい施策より先に、今あるものをつなぐ

ここまで読んで、「じゃあ何をやればいいのか」と思った方もいると思います。その問いが浮かぶのは自然なことです。ただ、そこで挙がる答えの多くは、結局「何を足すか」になりがちです。私の答えは逆で、足す前に、つなぐ

営業とマーケが同じ数字を見る会議をつくる。リードの定義を営業と一緒に決める。既にある記事に、営業の使い道を持たせる。ばらばらのフォームを束ねて、問い合わせの入口をそろえる。──新しい施策はひとつもありません。それでも、接続し直しただけで動き出す場面を、私は何度も見てきました。

「この3ヶ月でやること」と「やらないこと」を決める

とはいえ、全部を一気にはつなげません。だから順番を決めます。いま詰まっているのは集客なのか、商談化なのか、営業への引き渡しなのか。それを見極めて、「この3ヶ月でやること」と、同じくらい大事な「やらないこと」を決める。

やらないことが決まると、現場は楽になります。しかも、施策を足すわけではないから、現場の負担はほとんど増えません。

自社の課題がどこにあるか、まだ言葉にできなくても大丈夫です。話しているうちに、たいてい見えてきます。(無料の壁打ちはこちら

だから、設計と実装を同じ頭でやる

最後に、先ほど預けた話を。

分断は、分業から生まれます。戦略は戦略の専門家、サイトは制作の専門家、広告は広告の専門家、ツールはツールの専門家。それぞれが持ち場で正しく仕事をしても、持ち場と持ち場の間は、誰も見ていない。会社の中の部署間で起きていることが、発注先との間でも同じように起きるわけです。

コビトロジックが「設計から実装まで同じ頭でやる」ことにこだわっているのは、器用貧乏になりたいからではなく、間を切らないための一番シンプルな方法だからです。

このシリーズでは、私がB2Bマーケティングをどう考えているかを、順番に書いていきます。次回は、コンセプトに掲げている「売り込まずに、選ばれる。」の話。なぜ売り込みが好きではないのか、それでどうやって仕事になるのか、という話をします。

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