最近、別々の案件で自分が同じ言葉を口にしていることに気づきました。
「まず70点で出しましょう」。
片方はLP制作の定例会議で、もう片方は別の制作現場で。しかも一度は、思いつきで言ったのではなく、会議の議題としてわざわざ合意まで取っています。プロジェクトの初期方針として「完成度で止めず、まず70点で出して改善する」と明言して、議事録に残しました。
スピードが大事、という話に聞こえるかもしれません。半分はそうです。でも本当の理由は別のところにあります。これは、あとで揉めないための合意の話です。
70点は品質の話ではなく、順番の話
BtoBのサイトやLPは、公開するまで何も教えてくれません。トラフィックが少ないので、データが溜まり始めるのは公開したあと。つまり、作り込みに使っている1ヶ月は、学びがゼロの1ヶ月です。
一方で、公開直前には必ず「まだここが気になる」が出ます。これは絶対に出ます。気になる箇所は、探せば無限に見つかるからです。そして「気になる」を全部つぶしてから出そうとすると、公開日はどこまでも逃げていく。
だから、順番を最初に決めておきます。プロジェクトの一番最初の会議で、「初期は70点で出して、公開後に上げていく」と口に出して、合意して、議事録に残す。それだけです。
「70点」の中身を、具体的に言うと
とはいえ、70点という言葉だけでは何も決まりません。実際の案件で──自分のサイトも含めて──公開時に後回しにしたのは、こういうものです。
- 料金例。全パターンの料金表ではなく、代表的な2ケースだけ掲載して公開
- お客様の声。ページごと無いまま公開(うちのサイトがまさにこれです。後回しリストに入っています)
- スマホ用の画像。一部はPC版の流用でスタート
- 多言語対応。方針だけ決めて、実装は後回し
逆に、これだけは70点に必ず含めます。削ると「出せない」になるラインです。
- ファーストビューの一文。誰の、何のサービスかが3秒で分かること
- 問い合わせフォームが実際に動くこと。送信できて、通知が届いて、自動返信が返ること
- 計測。GA4とフォームの計測が公開初日から入っていること
つまり、うちの70点の定義はこうです。問い合わせが来たら受けられて、公開後の学びを計測できる状態。後回しにしていいのは見栄えと網羅性で、導線と計測は後回しにできない。ここを逆にした70点は、公開しても何も学べないので、ただの未完成です。
数ヶ月前の一行が、公開ボタンを押させてくれた
ある案件では、公開の最終判断をする場面で、未確定の要素がいくつか残っていました。普通ならここで「揃ってから公開しましょう」と延期になりがちな場面です。延期は一見誠実に見えるので、誰も反対しません。
でもこの案件では、初回の会議の「70点で出す」の合意を引用できました。いま残っている未確定は、想定外の欠陥ではなくて、予定通りの30点分です。そう言えるだけで、場の空気が「まだ出せない」から「予定通り出す」に変わる。数ヶ月前の議事録の一行が、公開ボタンの根拠になってくれました。
ひとつだけ補足すると、70点で出すのは、残りの30点を捨てることではありません。さっきの「後回しにしたもの」のリストを、議事録にセットで残します。このリストがないと、70点はただの妥協です。リストがあれば、それはそのまま公開後の改善計画になります。
「100点を目指さない勇気」みたいな、かっこいい話ではないんです。70点と口に出して、合意して、書き残す。それだけの段取りです。でもこの一手間が、公開直前の現場を守ってくれます。
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